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喧嘩

by RENEE
June 12, 1999


「てめぇ、俺の妹に手を出しやがったのか?」

シーヴァスが宿の部屋でくつろいでいると、そう怒鳴りこんできた者があった。
「???いったい君は何者なんだ?だいたい、今何時だと思っているんだ、君は。その上、入ってくるなり、その言いぐさは非常に不愉快だ。帰ってくれないか」
「てめぇ、しらを切ろうって言うのか?てめえが俺の妹にちょっかい出してるって、俺に言ってきたヤツがいるんだよ」
シーヴァスには、彼が何を言っているのか全くわからない。
「君の妹だって?いったい誰のことなんだ?それよりも、君はいったい誰なんだ?」

「てめぇ、まだしらを切るつもりか?」
シーヴァスの襟をつかんで詰め寄る。
「俺の妹に手を出そうとしただろう!」
「だから、誰のことを言っているんだ、君は。それがわからないのでは、答えようがないではないか。君はいったい私が誰に手を出していると言っているんだ?それに君はいったい誰なんだ?」
相手を落ち着かせようと、シーヴァスはわざとゆっくりと話し、自分の襟をつかんでいる手を外す。ところがその行動は裏目に出たらしい。シーヴァスがそうしたことで、彼は身の危険を感じたのか、いきなり殴りかかってきた。
(どうして手を外しただけで殴りかかられるのだ……)
「お、おい……」

「おい、いい加減にやめないか」
「うるせぇ、てめぇの方が先にこうしてきたんだろう!」
「私は手を外しただけだ」
「へ、お貴族様のことばは信用ならねぇ」
「いい加減やめろ!他の泊まり客に迷惑だろう!」
「そんなの俺の知ったこっちゃねぇ」
そうして殴り合いは続く。
(いい加減にしてくれ……)

「シーヴァス?グリフィン?……お二人ともいったいどうしたのですか?」
突然、声をかけられ、二人は一瞬止まる。
「君は黙っててくれ」
「お前の出る幕じゃねぇ」
そうきっぱり言われ、彼女はおろおろする。シーヴァスの様子を見に来てみれば、なぜかそこにはグリフィンがおり、しかも二人は殴り合いを演じている。
「お願いですから喧嘩なんてやめて下さい……」
何度言ってもやめようとしない二人。
「もう……お願いですから…………」
ほとんど泣きべそをかきながら、彼女は二人を止めようと二人の間に入る。

「きゃっ!」
天使が割り込んでくるなどと思ってもみなかった二人は、突然のことで振り上げた腕を止めることができなかった。
((しまった!))
そう思った時にはもう遅い。彼女は二人に殴られ、床の上に倒れていた。

「………ここは………」
彼女は目を開けると、見慣れない天井が見え、一瞬自分がどこにいるのかわからない。
(ここはベテル宮ではありませんよね……私、いったいどうしたのでしょうか……)
まだはっきりしない頭で考える。
(私、シーヴァスの様子を見にきて……それから……そうです……そこにグリフィンがなぜかいて……シーヴァスと喧嘩していたんですよね……それで……止めようと思って……)
がばっと起きあがる。
(私、お二人に殴られて……倒れてしまったのですね………)

「君があんなことを始めるから……彼女が傷ついたではないか」
「なに?てめぇが俺の妹にちょっかい出したことを最初に認めればこんなことにならなかったのだろう?」
天使が倒れたことに動揺して、二人は責任をお互いになすりつけようとする。と、その時……
「ん……?」
小さな声が聞こえる。

彼女が気がついたと知ると、二人は駆け寄る。
「おい、大丈夫か?」
「もう少し寝ていた方がいい」
心配そうに覗き込む二人。
「大丈夫です……」
そう言って起きあがろうとする彼女を二人は止める。
「もう少し寝ていた方がいい。後遺症が出るということもある」
「でも……」
とまどう彼女をグリフィンが無理矢理寝かせる。
「今は、おとなしくしてろって」

「それで……いったいなぜお二人が喧嘩をすることに……?」
「………」
「その前に、君に聞きたいことがあるのだが」
シーヴァスは彼女に問いかける。
「なんでしょうか?」
「君は彼を『グリフィン』と呼んだ。君は彼を知っているのか?」
「はい……シーヴァスはご存じないのですよね。彼はあなたと同じ勇者です」
彼女のことばに、グリフィンは居心地が悪そうに横を向く。シーヴァスはと言えば、開いた口がふさがらない。
「彼が、勇者だって……?」
「悪いかよ。俺みたいなのが勇者でよ!てめぇみたいな貴族様じゃねぇと、勇者はできないってのか?」
「そんな風に言っているわけではない」
険悪な雰囲気が漂う。
「やめて下さい……」

「「……」」
弱々しい天使の声に二人は黙り込む。
「グリフィン、君は私に『俺の妹に手を出そうとした』と言った。いったい君の妹というのは誰のことなんだ?」
「………」
「グリフィン、貴方の妹さんが見つかったのですか?」
「………ティアだよ。ティア・ターンゲリ(本名言ってもこいつらにはわからないだろうから、これでいいな)」
二人は驚く。あのティアがグリフィンの妹……
「ティアが貴方の妹さんなんですか?」
「ああ……この間見かけたんだ。それでわかった。あいつは知らないだろうけどな」
「………それで私が彼女に手を出そうとしているか………私はただ彼女を救い出しただけだ。おそらく君が聞いた話は、彼女を救い出した後、彼女に礼を言われて……」
そこでシーヴァスはやめる。これ以上言うと誤解が誤解を招きそうだからである。が、グリフィンがそこに含まれた不自然さを見逃すはずがなく……
「あいつが礼を言って、てめぇは何て言ったんだ?どうせ、てめぇのことだ、食事でもなんて言ったんだろう?」
「………」

「やっぱり、てめぇ、あいつに手を出そうとしたんじゃねぇか!」
「違う。誤解だ!」
シーヴァスが言い終わるか終わらないかのうちに、グリフィンがシーヴァスに殴りかかる。
「誤解だと言っているだろう!!」
「うるせぇ!」
「やめて下さい……」
「わ、わりぃ」
「私はお二人に仲良くしていただきたいです……」
哀しげに言う彼女に、二人は気まずい様子で視線を交わす。
「仲良くしていただけないのですか……?」

「君がそう言うのなら努力しよう。もちろん彼がいいと言うのであれば」
「お前がそう言うんじゃ仕方ねぇな」
そういいながらも、剣呑な視線を交わす二人。
「よかった……お二人が喧嘩をするのを見るのはとっても哀しいですから……」

「では、私、帰りますね」
「もう少し休んでいった方がいいのではないのか?」
「大丈夫です。帰ったら休みますから……では、お二人ともお休みなさい……」
そう言って彼女は空へと帰っていく。

「俺も帰るとするか……」
「結局君はいったい何をしに来たんだ?」
シーヴァスは不機嫌に聞く。
「ティアに手出ししたら、承知しないからな!」
「だから、誤解だと言っている。だいたい私には心に決めた女性が…」
「ほぅ……てめぇにそんな女性がいるなんて知らなかったぜ。シーヴァス・フォルクガングって言ったら有名なプレイボーイだって聞くぜ。そんなてめぇにそういう女性がねぇ……」
おかしそうにグリフィンは笑う。
「………」
「ま、そういうことなら今回のことは忘れてやるぜ。だが、遊びであいつにちょっかい出したら、その時は……忘れるなよ!」
そう言ってグリフィンは闇の中に帰っていく。
「やれやれ……今日はさんざんだ……彼女は殴ってしまうし、彼女がせっかく来てくれたというのに彼に邪魔されてほとんど話せないし」
(それにしても…彼が知ったら、また殴り合いになりそうだな……)

この二人が、後日、天使をめぐって争うのはまた別の話。


HP開設おめでとうございます。あの時、ネタをいただかなかったら、この話はなかったことと思います。このようなものでよろしければ、煮るなり焼くなりして下さいませ。(天使ちゃん、取り合う話、書きたいかも……時間があればですけれど)


ちょっとおしゃべりしただけのネタを,こんなに すてきな創作にしてくださってありがとうございます.
続編を是非読みたいです                          clare


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